雲の中で散歩

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Love story  獄京 forever

wedding present









ドイツの深い森に囲まれ、村、という雰囲気が残る、穏やかな小さな街。

隼人は京子を、その街の教会へといざなった。

隼人はいつもの上下黒のスーツに、白のシャツ、ネクタイ
京子は淡いイエローの草花模様のワンピースで出掛ける。


「 わあ、すごくきれい ・・・
天井が高いね~ ・・・・ 」

天井を見つめたまま、京子はゆっくりと体をくるくると回転させた。


「 隼人、この教会でピアノ弾いてたんだ♪ 」

「 まあな!」

明るく彼は答えると、懐かしい思い出の光に、その瞳は彩られた。

実家を出る前の 7歳の夏まで、隼人は姉と共にこの街の別荘に、毎年夏休みになると預けられていた。

イタリアにいる時よりも、比較的自由に遊べるこの街への訪問は、とても好きだった。
街の同世代の子供達も、隼人とビアンキ姉に屈託なく、平等に接してくれて、教会へ遊びに行ったり、近くの湖に泳ぎに行ったり、楽しい思い出ばかりだ。


思い出に浸っているような隼人の様子を見て、京子は嬉しかった。
しばし沈黙に付き合う。
自分達以外、誰もいない教会内は、静かな空気に包まれ、
鳥達のさえずりがかすかに聞こえるだけだった。


隼人の幼い頃の記憶に、楽しいものがあって本当によかった ・・・ 京子は温かい気持ちになりながら、そばにあった椅子の背に触れた。
深いチョコレート色の、歴史を感じさせるその木の椅子は、滑らかで、そしてほんの少しだけ、ひんやりとしていた。


小さい隼人もこの椅子に座ったかな ・・・



「 あの、京子、あー、ええと ・・・・・・・
この教会、気に入った?? 」

「 うん!
もちろんだよ♪ 」
優しく京子は笑う。

「 そか、よかった 」

彼女の笑顔に隼人はちょっと照れると、

「 式はこの教会で挙げようぜ 」 と静かに言い、彼女の手を握った。

「 うん ・・・ 」


手をつないだまま祭壇へと歩きだす。

二人とも穏やかな心持ちだった。


「 あとさ、式全体とか、俺に任せてくれるか 」

「 ふふ、いいよ~♪

隼人、大好き! 」
突然、朗らかな笑顔で、京子は爽やかに隼人に言った。

「 !!! 」


いつもそうだ ・・・
彼女は何度でも俺の心を持っていく ―――

こんな風に自分が愛されることなど、一生ないと思っていた。
ましてや結婚式を挙げるなんて。


「 オシ! 任せてもらうぜ♪ 」

京子はふわりと俺の手を取って、此処まで連れてきてくれた。
今度は俺が京子を導くんだ。


何となく楽しそうな、それでいて、真剣な隼人の横顔を見て、京子は想像しているよりもずっと、
彼が結婚をとても神聖なものと考えていることを改めて知った。
自分もその想いに応えなければ、とそっと輝く指輪をちらりと見ながら心に刻んだ。


「 隼人、可愛いなあ♪ 」

「 ん? 
なに? もいっかい言って 」

「 ううん、何でもないよ♪
お祈りしよう 」

ふふっと微笑み、京子は隼人を促す。
午前中の高い太陽の光がステンドグラスを透して降り注ぐ中、二人は祭壇の前でお祈りをした。





『 グーテンモルゲン! 隼人!
来たなら挨拶してくれよお。
会いたかったぞ!! 元気そうだなっ 』

『 隼人ぉー!!! 』


静かな教会に、突然英語での、二つの元気な挨拶が響いた。

『 ! 神父さま! アレックじっちゃん! 』

『 おお、そちらのスウィートなレディは、隼人の恋人だね 』

隼人はクスっと笑って、京子にウィンクした。

二人は教会の扉の方へと振り向き、
元気いっぱいな足取りで歩いてくる、白髪ではあるが、背はしゃんとした、おじいさんの神父さまと、
同じく白髪の、やや背が丸くなった、痩せ形の ゛アレックじっちゃん ゛ へと
笑顔で近づいた。
アレックじっちゃんは、何故か日本の作務衣を着ている。


『 神父さま、じっちゃん! おはようございます、お久しぶりっス!
スミマセン、今から会いに向かう予定だったんです!

彼女が俺の婚約者、笹川 京子です 』

隼人は喜びいっぱいの笑顔で、英語で紹介した。
朝の挨拶だけは、グーテンモルゲン、と流暢なドイツ語だった。


『 京子、こちらはこの教会の神父さま、エドワードさん。
この教会で、もう六十年以上、たくさんの人を救ってる、ヒーローさ!
そして、この街のもう一人のヒーロー、銀細工職人の、アレクサンダーさんだ! 』

二人の老紳士はニコニコ顔で、紹介の言葉を聞いている。

少年のような笑顔を輝かせる隼人が愛しく、
そして、婚約者という言葉がくすぐったい。

英語は隼人から猛特訓を受けていたので、京子は日常会話はできるようになっていた。

『 お会いできて光栄です、神父さま、アレクサンダーさん。
笹川 京子です 』

笑顔で丁寧に、挨拶と握手を交す。

『 やあ、私達こそ、光栄だ。
こぉ~んなちっさかった隼人が、こんな素晴らしい婚約者を連れて、ここへ来てくれるなんてなあ。
長生きはしてみるものだ!
ほんとにめでたい、いやあ、ほんとに。
あっと、隼人、アレックはヒーローだが、決して私はヒーローじゃないよ 』

身振り手振りで話していた陽気な神父さまは、
バシっ と隼人の背中を叩いて、そして嬉しくて笑った。

『 京子、私も会えて光栄だ。
ちなみに私もヒーローなんかじゃないさ、エドこそヒーローさ♪
隼人は私の工房にも毎日のように遊びに来てくれてなあ。
毎年、夏になるとこの街に来ていたのに、ある年から突然来なくなって。
ずいぶん心配したものだ ・・・
隼人が中学の頃だったか、日本にいる、という手紙をもらった時は、心から安心したよ、今でも覚えている。
それから二十歳の時にも顔を見せてくれたなあ。
クリスマスカードも、毎年贈ってくれてるんだよ 』
アレクサンダーは懐かしそうに微笑んだ。

『 おお、そうだそうだ、手紙、懐かしなあ。
隼人のクリスマスカード、うちにも飾ってあるぞ♪ 』
エドワードもにっこりした。

『 なっ もう昔話はストップ!
それより! じっちゃん、作務衣似合ってるじゃん!
神父さまも着てみた?? 』

隼人は、ダメダメ、と赤くなりながら、思い出話から作務衣の話へと懸命に移動しようとした。
隼人は二人の老紳士に作務衣をプレゼントしていたのだった。


クリスマスカード ・・・ そうだったんだ、
隼人らしいな。

京子は楽しげな三人を見ながら、心が温かい光で満たされていくのを感じた。


『 神父さま、今度の 9月にまとまった休みがもらえるんで、この教会で式を挙げたいんです。

まだ予約間に合うかな?? 』

『 おお!! めでたい、めでたい!!!
まだ余裕があるし、もちろん大丈夫だよ。
おめでとう、隼人、京子!! 』

神父さまは二人の手を取って、握手をした。

『 おめでとう!!! 』
アレクサンダーは隼人の髪をくしゃくしゃっと撫でた。

『 あ、ありがとうございます ・・・!!! 』

二人は同時にお辞儀をして、お礼を言った。


9月
隼人の誕生日だ!

ドキドキして、京子は隼人を見た。
隼人はまたしてもウィンクで返した。


まさかこんなに早く式を挙げられるとは思っていなかった。
9月が飛ぶように来てしまいそうだ。

まるで飛び出してしまいそうに、鼓動が高鳴る ―――



『 日にちは 9日でお願いします! 9月 9日で 』

『 うんうん、了解した。
お、君の誕生日じゃないかあ! 』

『 はい、ボスが配慮してくれて、それで、良い機会なんじゃないかと思って 』

『 そうかそうか、うん、機会は逃すもんじゃないからな。
よく決心した 』

こういう時、隼人はとても落ち着いていて、大人の一面が際立つ。


『 隼人、京子、本当におめでとう。
今回は長く滞在できるのかい? ん? 三日だけ?!
何と! さっそく結婚式の打ち合わせをしなければ!

みんなでお茶を飲もう! 』

一足先にエドワードはスキップしながら扉へと向かった。
めでたい、めでたい! という独り言がわずかに教会に反響していた。




午前十一時を過ぎた頃、神父さまは教会の芝の広場の木陰に、
テーブルと椅子を準備してくれて、
( 俺が運びます! と隼人がセッティングした。)

神父さま夫妻とアレクサンダー夫妻、隼人と京子、六人でお茶会をした。
アレクサンダーの奥さんは、手作りのドイツパンのサンドウィッチを、たっぷり作ってくれ、
神父さまの奥さんは、チョコレートとベリーのケーキを焼いてきてくれた。


『 さあ、二人に贈り物がある。
といっても、私達からのものではないんだが ・・・
まあ、私達からの贈り物は当日まで待っておれ♪ 』

おいしいお茶と食事でおなかがいっぱいになり始めた頃、
アレクサンダーが語りかけた。
そうして、柔らかな色調の木目が美しい、小さな木箱を隼人へと手渡した。


『 開けてみなさい 』

隼人は少しとまどいながら、そっと箱を開いた。

輝く上等な銀のティースプーンが、一つ納まっている。
シロツメクサの、クラシカルな凝った模様が、ティースプーン全体に彫られていた。


『 わあ 』
京子がため息を付く。

『 ティースプーンは幸運の象徴だよ、京子♪ 』

にっこりしてアレクサンダーは続ける。

『 まあ、私が作ったんだが ・・・ 良い出来だぞ、自信作だ!
ある時、一人の若い女性が私の工房にふらりとやってきてな、このティースプーンをいたく気に入って、購入しようとしたんだ、
しかし何分、その時は彼女の持ち合わせが足りんかった。
それで、半年後くらいにまたふらりと現れて、今度こそ購入したのだ 』

隼人はただ、黙って聞いている。

『 その時彼女は何と、このティースプーンを、隼人にわたしてあげてくれ、と頼んできた。
いつか隼人が愛する人と一緒に、この街を訪れた時に必ず、と、絶対にその日がくるから、あげて下さい、と 』

『 ・・・ じっちゃん、その人は日本人じゃなかったか? ・・・ 』

『 ふむ、アジア系なのは確かなんだが ・・・ 素性は全く教えてくれんかった 』


隼人はアレクサンダー夫妻に、そして全員に向かって、元気に言った。

『 ダンケシェーン。
たぶん、その人は俺の母だ。
長い間、預かっててくれて、本当、サンキュ 』


母さん、ありがとな ・・・

ティースプーンを見つめながら、寂しさと嬉しさが交錯するような、言葉に表すことのできない感情に、隼人は一瞬だけ浸った。


『 ・・・ そうか、
購入できなかった後に、私はこのティースプーンを、彼女のために取ってはおかなかったんだ ・・・ 彼女も取っておいてくれと言わなかったしな ・・・
縁かのう。
・・・ 彼女はわかっておったんじゃな、
隼人がちゃんと一人の人を愛せるということを、な! 』

アレクサンダーが明るく励ました。
京子はもちろんのこと、今、テーブルに着いている者はみな、
隼人の母がどんな人生を歩んだか、そして隼人の実家の家族構成がどうなっているのかを、隼人自身から話してもらっていた。


『 本当、感謝してる。
大切にするよ 』

微笑んで隼人はティースプーンを京子へと手渡した。
彼の微笑みがせつないようにも見えて、京子は不覚にも泣きそうになってしまった。

そんな彼女を見て、隼人は愛しさが込み上げてくる。

『 さ、ケーキ頂こうぜ♪ 』 
心配するな、というように隼人は元気に言い、
京子へ甘やかなケーキを取ってあげた。



初夏を迎えたばかりの六月のドイツの空は眩しく、
何処までも輝いていた。
爽やかな風が吹き、
深く濃い緑に、夏の日の光が遊んでいる。


いつまでも思い出すだろう

楽しく、美しいお茶会だった。








○ グーテンモルゲン = おはよう
○ ダンケシェーン = ありがとう


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2009.09.09 03:04 | L-s | トラックバック(-) | コメント(-) |
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